最近の列車内設備とインテリア

 鉄道を利用する立場で、新しい鉄道の変化を最も強く感じることは、車内の設備や環境といった快適さであるように思われます。国鉄の近代化と輸送力増強が進められたのは数十年前の1960〜70年代にかけてのころでしたが、つねに先行する形で旅客輸送の需要が急増したことから、次々登場する新型車両も定員の確保が優先され、長距離輸送を担う急行形は旧型客車と同じボックスシートで量産されました。新幹線でさえ普通車座席は横5列となり、これは今日のN700に至るまで踏襲されています。国鉄時代の特急列車のスタンダードは、普通車は2人掛け回転式シートで色は青、グリーン車は赤のリクライニングシート、前後の座席の間隔は普通車91cm、グリーン車116cmでした。また車両の標準化という考え方が根強くあったために、大都市圏でも地方幹線でも車内に関しては同じ仕様が採用されてきました。実際には、現在と違って当時は地方路線でも鉄道の利用者が多かったので、画一的な設備でも間に合っていたのかも知れません。

 車内設備や室内のデザインに目が向くようになったのは、だいぶ時代が下って1980年代になってからでした。高速道路の整備や航空の普及に伴って鉄道利用者の漸減傾向に歯止めがかからない情勢になったことがきっかけです。鉄道車両の設計にデザインを前面に押し出した最初の成功例は2階建て新幹線100系で、続いて登場した近鉄のアーバンライナーでしょう。いずれも座席などの改善とともに車内での居心地のよさが一変しています。ちょうど国鉄からJRへと切り替わるころでしたから、JR各社でも特急列車のデザインには面目にかけても取り組む姿勢を見せ、多くの魅力的な列車の登場につながってきたことになります。

 そうしたなかで、やはり注目されるのはJR九州がこだわって導入してきた「デザイン」でしょう。「つばめ」の787系電車や後に続く883系、885系などは、まず外観の斬新さや色使いに目がいきますが、車内に関しては、デッキから客室への構成や座席の配置、基本的な寸法などベースは変わっていません。印象が大きく違ってしまうのは、おもに床や壁面、座席などに使われる素材や色の違い、外光や照明による光の「遊び」のせいと思われます。一方、観光要素の強い列車では窓側に向けた座席や展望のための特別な設備を設ける例がありますが、こうした変則的な設備が最近では一部を除いて標準的な設備に戻ってきています。一般的な利用者にとっての、特急列車は2人掛けの一方向きシートで、デッキの奥にはトイレがあるという「刷り込み」は決して軽視できず、個室や2階建てなどの変則的な設備は、それぞれの需要はあるものの一時的な話題に留まることが多いようです。JR九州における多彩な試みも、基本を崩していないことが利用者の評価につながった一因ではないでしょうか。デザイン関連の特集においては九州の話題が出ることが多いのですが、今号(8月号)ではそうした観点から改めて見つめ直すことにしました。

(2007年8月号:編集後記)

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