鉄道ジャーナルの本

されど鉄道文字

全国書店で発売中。
発行:2016年2月10日 新書判 296ページ+カラー16ページ 定価 800 円(+税)
発行:鉄道ジャーナル社 発売:成美堂出版 ISBN 978-4-415-32089-2

駅を歩いているとさまざまな文字が目にとまる。駅名標、発車標、形式・番号など車両標記、SLのナンバープレート…。見比べると、それらの文字は、それぞれ一定の規則に従って書かれていることに気づく。国鉄の駅名標に使われた文字書体「すみ丸ゴシック」は、当時、職人の手書きに頼っていたことに始まる。車両に書かれた文字も、実は明治末年に制定された様式に準拠している。
およそ百年、駅や車両に掲げられた文字や標記はどのようにして書かれてきたのか。まつわるエピソードをたどりながら、文字に宿る独特のかたちの知られざる過去を通じて広がる鉄道文字の世界。
その源流をたずね、当時を知る関係者にあたって、文字書体の形成と知られざる字書きの技、今日までの移り変わりを丹念に追ったロマンあふれる異色の鉄道書。

富士岡駅車両文字板SLばんえつ物語


✿本書の内容✿

【はじめに】 駅名標は未知の土地への案内人

文字が語る「サービスの心」
鉄道書体すみ丸ゴシック「すみ丸」を守り育てた須田寛氏の述懐を踏まえて
 ❖国鉄の掲示規程にのった駅名標の「角ゴシックの隅を丸めた書体」発祥の理由は。
イントロダクション/最初は行先標から/なぜ、鉄道文字の表記に惹きつけられたか/仮名の美しさ重視(筆文字とは)/筆文字から丸ゴシックへ/すみ丸ゴシックの誕生/すみ丸ゴシックの形成/ホーロー引き駅名標の文字/国鉄最後の鉄道掲示規程/すみ丸ゴシックの継承/新幹線ホームの駅名標/LED表示/日本語のデザインを文字に残す
【コラム】鳥居形の駅名標

よりよい文字へのこだわりが生んだ偶然
現代に生きる「すみ丸ゴシック」半世紀前の手書きのよさに止まらない普遍的な価値を獲得
 ❖字書きの現場でこだわりと切磋琢磨が生んだ「佐野書体」の真実とその後。
良い書体を作る 良い書体を探す/すみ丸ゴシックを作る/すみ丸ゴシックを継ぐ/繁忙期の字書き作業/隅のひみつ/手書きに依らない新書体を作る/すみ丸ゴシックの字母を保存/品川駅開業時のハプニング
【コラム】「照明」は駅の電気掲示器から

昭和の広告看板にも重宝された
ホーロー引きの駅名標を作る 国鉄からも受注した工場で訊く
 ❖国鉄指定書体を使い実物と同じ仕様、製法で作った「されど鉄道文字」看板。
ホーロー引き駅名標と「すみ丸」/柱用駅名標の変遷/ホーローで作る/掘り文字の版を作る/文字を掘る/浮き文字/新幹線「ひかり」「こだま」の行先標/柱用駅名標の現在
【コラム】行先標のデザイン

鉄道国有以来の文字が今も生きる
車両の標記 車両工場の伝統を受け継ぐ大宮総合車両センターで訊く
 ❖明治末年に制定されたカナと数字が今日に生きる。独特の字体と字書きの技法。
車両内外に見るさまざまな標記文字/車両標記の工法/車両標記の文字作業/車両標記の文字(国鉄独特の文字、黒岩文字、用意された文字の設計図、車両称号規程とステンレス文字)/床下の文字は手書きの文字/鉄道とともに歩んだ文字

蒸気機関車の前面を重厚に飾る青銅の板
ナンバープレートと文字 図面で指定された国鉄書体にも鉄道工場ごとの出来栄え
 ❖蒸気機関車の前面を飾る番号板にも時代を映す差異。文字の形を指示する図面へとさかのぼる。
型と磨き/情勢の変化による標記の移り変わり/鷹取書体/ナンバープレート作りを通じて/発掘された古い設計図から(番号板の図面)

もうひとつの書体ものがたり
営団地下鉄のサイン文字 直感的な読みやすさを追求したゴシック4550書体
 ❖電車の窓から一瞬で判読しやすい文字とは。わずかに横長のゴシック4550書体の誕生まで。
ゴシック4550前夜/ゴシック4550の開発/各社の多彩な駅名標の様式と文字

都市の景観に一体化する百年文字 ロンドン地下鉄とジョンストン・サンズのように
 ❖ロンドン地下鉄で100年にわたって使い続けられている文字書体。

【あとがきに代えて】文字をたずねる


されど鉄道文字・広告 】 (PDF)

✿著者紹介✿

中西あきこ(なかにしあきこ) 1975年神奈川県生まれ。二松学舎大学大学院修了。大学時代より書道を学ぶ。雑誌連載「二駅歩き」をきっかけに地下鉄に残る旧い文字に興味を持つようになる。取材の際、国鉄時代に制定された統一書体すみ丸ゴシックと出会う。以来、手書きの駅名標文字の魅力のとりこになる。2014年より月刊『鉄道ジャーナル』で「されど鉄道文字」の連載を開始。昭和の時代感覚あふれる看板や書体をたずねてさらに取材を続けている。